英語上達体験記(2)英検準1級に挑戦する英語上達体験記(2)英検準1級に挑戦する
今回は A. O. さんが3年の苦闘を経て一級に合格する手記です。

英検一級は天賦の才に恵まれた特別な人しか合格しない試験、このように理解していた頃がある。「お月様 とってくれろと 泣く子かな」という俳句があるが、私はすでに分別のある大人(?)である。とはいえ、いったん心に抱いた情熱を押し殺すのは実に難しい。このようにして、その後三年以上にわたり、泥沼の一級戦線で一進一退の戦闘を繰り広げることになった。

・この単語は本当に必要なのか?
海外で英語を使って何不自由なく生活できる人でも、英検一級で出題される単語を見ると、面食らってしまう人が多いという。だとすれば、どうしてそのような単語が出題されているのだろう。こういった難解な語彙は不必要ではないのか、当時はそのように感じていた。

実はこれが大きな誤りだった。一級に出題される単語は、海外のメディアで当たり前のように使われているのだ。例えばこれらの単語を知らないと、新聞や雑誌を読むとき辞書ばかり使うことになり、読書スピードが大幅に落ちてしまう。現代は高度情報化社会であり、大量の情報をいち早く処理する能力が求められている。このような時代背景を斟酌すれば、英検一級の語彙問題も、実は合理的な出題といえるだろう。

そこで英検一級受験対策用に市販されている単語集を購入してみた。しかし、私はこの単語集を途中で放り投げた。単語をアルファベット順に覚えるなど、退屈極まりない。やはり単語は文章の中で発見してこそ、初めて生きた言葉として語りかけてくるわけで、もっと楽しい覚え方があるはずなのだ。

そこで私は毎日英字新聞の社説を読み、その中からわからない単語を10個ほどピックアップし、この単語を必ず覚えていくという方法をとった。今でもある単語を見ると、その単語を初めて見たときの社説のテーマまで思い出されるから不思議なものだ。

方法は極めて簡単、メモ用紙の左側に新しい単語を書き写し、右側に日本語を書く。そしてトイレに入る前、必ずこれらの単語をチラッと眺めるのだ。この方法は絶大な効果を生んだ。というのも、単語を覚えるコツは要するに繰り返しにあり、トイレへ行くリズムにあわせてこれを繰り返せば、確実に記憶は強化される。また、単語を確認する場合は本当にチラッと見ればいい。忘れることを気に病まなければ、ストレスで膀胱炎になる心配は無用だ。この単語メモは、3日前、2日前、そして昨日分と、3枚所持すると余計効果があがるような感じがする。

これを名づけて「単語チラリ」作戦、略して「タンチラ」作戦という。「パンチラ」ではないので、念のため。

このように書けば、単語の問題を簡単に克服したようだが、実態はまったく逆で、いつまでたってもわからない単語がたくさん出てきた。しかし単語の暗記は、努力を積み重ねるだけでこれといった才能もいらず、誰でもその数を増やすことができる。とにかく執念深さと繰り返しが重要なのだろう。

・一級と準一級で問われる読解力の違い
一級と準一級の試験を比べると、そこに出題されている読解問題の量に驚かされる。最初問題を見たときは、出題されている英文をすべて読むなど、まさしく神業ではないかと思ったものだ。ただし、英文そのものは英語圏の新聞や雑誌が出典となっており、準一級程度の読解力があれば、その意味を理解すること自体は苦労しないのだが、いかんせん量が多すぎる。

ここで要求されるのが速読能力ということになるが、そもそも速読とは具体的にどのようなスキルを意味するのだろうか。

最近テレビでよく見かけるのだが、一時間にラーメンを10杯とか20杯平らげる人がいる。ここに登場する人たちも、バイキングなどを利用して猛特訓(?)をするそうだが、やはり早食いの達人になるにはある程度が必要だろう。

しかし英語の速読だと、ラーメンの早食い競争のような天分などいらないし、体を壊すこともない。ただ一口に速読といっても、そこには乗り越えねばならない壁がある。その壁こそが、文法にとらわれず英語を語順どおり読んでいく、という技術なのだ。

自転車に乗るとき、大抵の人は最初に補助輪をつけて練習するが、英文法とはこの補助輪に似ている。まだ英語に慣れていないときは、一つの文を理解する場合、大抵の人が文法知識を駆使しながら(つまり補助輪を使いながら)、これは主語、これは述語、というように読んでいくことが多い。

英文を読むスピードが遅い理由はまさにここにある。もはや一級に挑戦するとなれば、英文法や日本語の訳語を介在させず、英語は英語として読み進んでいく必要があるのだろう。このような読み方をすれば、わからない単語も文脈の中でとっさに判断することが可能となり、やがてはリスニングにも成果が出てくる。リスニング力が今ひとつ伸びないと思っている人は、聴解能力になんらかの問題があるというより、この速読力が欠けている場合が多いのではないだろうか。

私が速読の練習に使ったのは新聞記事だったが、自分の好きなテキストなら別に何でもいいと思う。英語を使った読書の楽しみとは、実はこのスキルを会得したあとで生まれてくるのかもしれない。

・リスニングの盲点
私は何でも他人のせいにする性格で、郵便ポストが赤いのはあいつのせい、電信柱が高いのはこいつのせい、となんでも責任転嫁や八つ当たりをする癖がある。これと同じように、リスニング能力が上達しないのは私の耳が悪いせいだとか、試験会場のカセットデッキが粗悪品だとか、とにかく様々な原因を追求してきた。しかし今振り返ってみると、私が槍玉に挙げてきたこれらの罪人は、ほとんどが冤罪にすぎなかったようだ。

リスニングが苦手な場合、たいていの人は正確な発音ができていない場合が多い。例えば一例をあげると、私はindictment (インダイトゥメント)を(インディクトメント)と発音していた。これではいくらリスニングの練習をしていても、いつまでたっても正しく聞き取れない。

リスニングを伸ばすコツとして、放送を漫然と聞き流すより、まずスクリプト付き教材の使用を薦める人が多いが、一つにはこうした理由が挙げられるからだろう。スクリプト付きの教材を使っていけば、自分の発音がいかに誤っていたのか、そこが確実に理解できる。

残念ながら私は取り組んだことはないが、ネイティブの友達がいればその人の前で雑誌か何かを朗読し、間違っている発音がないかどうか調べてもらうのも妙案かもしれない。このように、発音とリスニングの因果関係は極めて大きな比重を占めていると思われる。

いまだにリスニングが苦手な私がこのようなことを書くのは面映い限りだが、リスニング上達のコツは、正しい発音と速読、意外とこのあたりにあると思うのだ。海外体験が少ないからとか、耳が悪いからとか、世間でよく指摘されるリスニング能力が伸びない理由、こういった原因はまさしく冤罪で、真犯人はまったく別の場所に潜んでいるように思う。

・英語でスピーチをする
英検独特の試験形態として二次試験の面接がある。やはり英語を身につける以上、ある程度の会話能力を検査する方が合理的なのだろう。ただし一級の場合、単にしゃべるだけでは合格させてくれない。最初に五つのテーマ与えられ、その中から一つを選び英語で二分間のスピーチという厄介な課題が待っている。

最初は「たった二分か」と甘く見ていたが、実際に試験に臨んでみると、これがとんでもない代物だった。この二分間というのは実に長い。たとえば電話している最中、相手と険悪な雰囲気になり、お互いが二分間沈黙するとしよう。この長さは並大抵のものではない。とにかくスピーチをする場合の二分というのは、これと同じような長さを感じるのだ。

たとえば、「少子化について」というトピックが与えられても、事前に何の準備もしていなければ、「うーん困った問題ですね・・・どうすればいいのかな・・・政府が何かすればいいのかも・・・うーん」このようなことしか言えなくなる。
そこで大抵の人は、想定スピーチ原稿というのをあらかじめ作り、それらを声に出し覚える努力をするのだという。このような準備をしておけば、「少子化が進む原因 → 予想される影響 →政府の具体策」このように首尾一貫したスピーチをすることが可能になるし、予想もしなかったトピックが出題されても、それをどうにかしのげるだけの実力を養うことができるのだ。

私はこの二次試験に一度落ち、その後想定スピーチ集を80個ほど作成した。そしてそのスピーチ原稿を繰り返し繰り返し音読していったのだが、この作業を通じて、英語を漫然と話す癖を矯正させられているような感じがした。英語は極めて論理的な言語だから、二分間スピーチという練習を通じて、その論理性が多少なりとも身につくよう、試験そのものがプログラムされているのかもしれない。

また、これからの社会はますますグローバル化が進展する。そういった状況の中、自分の意見を論理的に主張できる人を輩出したい、英検の二次試験にはこういった願いも込められているのだろう。

このようにして念願だった英検一級にはやっと合格することができた。しかしいまさらながら感じるのだが、大切なのは合格証書という資格ではなく、この試験に合格できるだけの実力だった。つまり、資格に意味があるのではなく、この能力を今後どのように生かすかが重要になるのだろう。

英語がまったくわからなかった初心者から勉強をはじめて、コツコツとそれを積み重ねたら、いつのまにか英検一級に合格することができた。英検協会には、受験料だけでも十万近い金額を貢がせてもらったわけだから、今後はこの実力を使い、投資金額の回収に励みたいものである。

最後に読者の皆さま、私の体験記を読んでいただき、たいへんありがとうございました。

 超初心者勉強法へ
 英語かけこみ寺へ

This page was written by Mike Sakamoto.
Email address: mike@uniconpro.co.jp